オクムラ・ホーム日記

本当に言いたかった事を。。。

ポリ管は橋梁の伸縮を吸収する?

第9回のテーマです。

『ポリ管は橋梁の伸縮を吸収する?』

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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ポリエチレン管

問題点および改善点

基本的に橋梁は、桁(コンクリート製、鋼製)素材の伸縮を考慮し、橋桁と橋台の間にすき間を設けてあります。

その橋の側面に配置するだけのポリエチレンの添架管が、橋梁の伸縮分を吸収し解消することはありません。

逆に橋長に合わせるためには、パイプ自体の伸縮量を考慮する事が必要になります。「線膨張係数」で、一般的な橋桁素材のコンクリートを基準に比較しても、鋳鉄管が同等、炭素鋼管が1.2倍、ステンレス鋼管が1.7倍、塩化ビニル管が7倍、ポリエチレン管が13倍の伸縮量(変化率)を示しており、ざっくり説明すれば、仮にコンクリート橋に1cmのすき間が設けてあれば、添架するポリエチレン管には13cmのすき間を設けなければ、同じ位置関係はキープできません。

(追記)
通常、両端が固定される添架管のパイプ伸縮は考慮しなくていい様な意見を聞いたこともありますが、間違いは明確であります。

パイプは地下に埋設すれば、拘束及び保温された状態となり、埋設後の温度変化は厳格に考えなくてよい事にはなりますが、それは埋設部の話であります。露出部分は当然、気温(温度変化)の影響は常に受ける事になります。

 

配管は全ての場合で一体化構造が安全である?

第8回のテーマです。

『配管は全ての場合で一体化構造が安全である?』

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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ステンレス鋼管

 

問題点および改善点

一体化構造であればパイプラインから漏れだす危険は低く常に安全側である。一見もっともらしく聞こえますが、水管橋(屋外露出配管)の場合には、該当しません。

電線をイメージしてもらいたい。電線は電柱間は一体化(1本)で通してあります。冬になると電線が寒さで縮むので、意図的に垂れ下げてあります。強く引っ張れば、電柱に負荷が掛かり、強風時には倒れる危険も増す事から余裕を持たせています。一体化でまっすぐ張ってしまいますと、低温時、長さが足らなくなり最悪、躯体破損の原因になります。これが電線の熱膨張対策の事例であります。水管橋(屋外露出配管等)において、美観・空気弁機能を考慮すれば、垂れ提げることは出来ませんので露出部を直管だけで一体化することは、当然不可能になります。

温度変化の大きい屋外露出配管に対しては、伸縮継手装置もしくは、エルボ返し配管等を使った熱膨張対策を行うことになります。

 

(追記)

直線性は当然ですが、水平及び勾配維持を基本とする水管橋(屋外露出配管等)においてすべてを一体化する事とは、熱膨張対策を取らない事になり、構造上満足させる考え方になりません。

 

支持間隔は「許容たわみ」から算出する?

第7回のテーマです。

『支持間隔は「許容たわみ」から算出する?』

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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独立水管橋



問題点および改善点

添架形式水管橋の支持間隔は、水管橋パイプビーム形式の「許容たわみ」から構造計算により算出し、決定する。一見もっともらしく聞こえますが、全く根拠はありません。

水管橋設計基準に、水管橋の設計にあたっては「たわみ」が許容値以下であることを照査する。解説として、通水管は空気弁の効果および美観上から原則としてキャンバーを付けるものとするとも明記しております。

これは、いわゆる、独立水管橋における通水管の上側部に弓状にそりをつける製作キャンバーの事が「許容たわみ」であります。キャンバーとは剛性を保つための最低限のアーチ形状のことであります。設計時、パイプの自重及び水重を無視しまっすぐにしてしまうと、施工後はパイプの中央部が凹んでしまいます。あらかじめパイプを弓なり(上に凸)に製作キャンバーを付けて設計し、(施工後の架設キャンバー、通水後の仕上りキャンバー)の基準値を満たすことで、まっすぐで強固な水管橋となります。

たわみから制限される支間長は、金属管における独立水管橋の問題であり、添架形式には適応されません。

(追記)
そもそも添架形式配管はキャンバーをつける構造の水管橋ではありませんし、つけようもありません。
重複しますが、本来、応力・たわみから求める独立水管橋における支間長添架形式水管橋支持間隔は似て非なる物でもあります。

数字の意味合いも
L/350とL/500 とではたわみ(キャンバー)の大きさではL/350の方が大であります。

支持金具はパイプが軽いほど個数は減る?

第6回のテーマです。

『支持金具はパイプが軽いほど個数は減る?』

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

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ステンレス鋼管


問題点および改善点

添架形式水管橋の支持間隔は架設重量ではなく、パイプの直線性ならびに水平保持性を考慮し、口径ごとに基準値を各パイプ協会が示しております。
小さなパイプほど直線性能は低いので、大きなパイプより支持間隔は当然狭くなるので、個数は多くなります。

パイプの種類に関しては、ビニール管ならびにポリエチレン管は金属管より直線性能が低いので同径比較で間隔は狭くなります。

尚、伸縮継手を機能させる為には、直線性は無視出来ない重要な問題であります。

 

(追記)
二条、三条の並列配管をする場合は共通のブラケットにすれば経済的になると思いがちだが、同管種、同口径であれば、何条でも同一のブラケットで問題はないが、支持間隔が異なるパイプであれば、直線性の低い方のパイプ間隔に合わせる事になるので、当然、ブラケットの個数は増える事となります。極端にサイズの違うパイプを共通のブラケットにした場合は不経済となる可能性が高くなります。

水管橋の水温は一定なので伸縮は考慮しない?

第5回のテーマです。

『水管橋の水温は一定なので伸縮は考慮しない?』

 

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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スリーブジョイント


問題点および改善点

水管橋の施設基準は流体の温度とは関係なく、気温が-10℃~40℃の寒暖差50℃の条件で管内空虚時の管体温度-10℃~61℃で温度差71℃を最低限考慮することとなっている。

屋外露出配管は常に外気にさらされており気温と直射日光の影響をもろに受けるからである。

尚、通水していれば一定と思いがちだが、施工中及び施行後も通水開始するまでは、カラの状態である。

完成後検査まで数ヶ月、数年待ちの物件も当然あり得ます。

又、下水道圧送完路であれば、カラの状態と満水を繰り返すことが現実であります。

完成後も保守、拡張等の関係では一定期間の断水も当然あります。

 

(追記)
カラの状態であれば、漏れる液体がないので心配は無いとの意見がありましたが、カラの状態の、管体温度が上昇した場面を想定し、熱膨張対策を考慮しなくては、構造物として、座屈、変形、躯体の破損等が起き、その形状が維持できません。

水管管橋の施設基準の管体の温度差 71℃は、伸縮対策としては給湯設備用配管ほどの考慮が必要となります。

ポリエチレン管は伸び縮みが大きいから伸縮継手はいらない?

第4回のテーマです。

『ポリエチレン管は伸び縮みが大きいから伸縮継手はいらない?』

 

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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伸縮接手


問題点および改善点

添架形式水管橋(屋外露出配管)の場合に、ポリエチレン管以外は温度変化にて伸び縮む分を、伸縮継手のすき間(呑込みしろと縮みしろ)にて、逃していることを前提にすれば間違いは明確である。

極論にはなりますが、パイプが温度変化により伸び縮みしなければ伸縮継手装置の必要は無くなります。パイプの伸び縮みの大きい事は、利点ではなく欠点なのです。

全ての物質は温度上昇にて膨張する。固体の長さが温度(気温)により変わる変化率を線膨張係数で表します。一般化しているパイプの中においてポリエチレン管(PE100)が一番変化率が高い数値を示しており、長さ(体積)が不安定な材質のため一番考慮しなくてはならない大問題であります。

(追記)
水管橋(屋外露出配管)においてこれまでのポリエチレン管の設計と施工を見た場合地盤の変位に対応する前に、気温の変化に対応出来ておりません。現実問題としてポリエチレン管は最も伸縮量を考慮し設計及び施工しなくてはならないことの事実を理解されていない技術者が水道事業関係者の中にも思いのほか多数おられ苦慮している所でもあります。

90度曲管は不平均力から使用しない方が好ましい?

第3回のテーマです。

 

『90度曲管は不平均力から使用しない方が好ましい?』

 

業界内で、一般常識化していますが、間違って認識されている事例です。

 

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エルボ返し


問題点および改善点


カニカル継手構造のパイプの問題であり、水管橋(屋外露出配管)などの、溶接(融着)接合の一体化構造の場合には当てはまらない。


プラント配管(溶接接合の鋼管)では、通す液体が水とは限らないため、漏れ出す危険性を考慮し熱膨張対策としては、伸縮継手より90度曲管を使用し増減分を逃がすといった考え方があります。

管路内にすき間を設け接合する、伸縮継手を設置すれば、水道、下水道では事足りると、おっしゃる方もおられますが、同じ融着接合方式のポリエチレン管の伸縮量は、他管種に比べて異常に大きくて本来、温度変化の大きい屋外露出配管には向かない為に、専用の伸縮継手も現状では、ほぼ存在しておりません。

直線性能のないポリ管の場合に、伸縮管で対応出来たと仮定しても、少なくとも10倍の設置は必要となり、経済性の観点からも本末転倒した、管路(水管橋)となってしまいます。

そこで、配管直線部中央付近に固定点を設置し両端部分はエルボで向きを変え、その他は自由なルーズ支持とし、管移動分の逃げ場を設ける設計とすれば、エルボの先の短管がポリ管の特性でもある柔軟性(フレキシビリティ)で「しなり」、継手部分には負荷は掛らずに、直線部の中には伸縮継手を設けなくともよくなります。

曲管直線部の両端のスイングだけで、伸縮分を許容出来ない場合には、その中間にループ管(中間伸縮用屈曲管路)などを設ける必要はあります。

 

(追記)
基本的にプラントの配管では、熱膨張対策として、エルボ返しによるループ形式配管の方が通常であり、ごく普通に設計を行いますが、水管橋の世界では、これまで、あまり馴染みがないので提案しても担当者に敬遠され不採用になるケースが多い、難しいやっかいな問題であります。